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過去の受賞作品

受賞作品審査員講評3次審査風景

審査員講評

関東・関西審査委員長 伊久 哲夫 (積水ハウス株式会社 取締役副社長 技術・環境推進管掌)

第12回目を迎えた平成28年度の今回を持ちまして、本コンペは最終回を迎えることになりました。過去の大会では、東西それぞれのエリアで競い合い、2つの最優秀作品を選出してきましたが、今回は最終回ということで、念願であった東西対決をリアルサイズの作品で実現することが出来ました。関東16大学55作品、関西12大学95作品を勝ち抜いた、それぞれの代表2作品ずつが、晴れて大阪の本町ガーデンシティで一堂に会しました。12年目にして見る初めての東西対決でしたが、改めてエリアごとの作品の個性や審査員の先生方の視点の多様さに触れることができました。最後は関西の代表から、僅差で最優秀作品が選出されましたが、公開審査によるとても見応えのあるものとなりました。

関西審査委員 芦澤 竜一 (滋賀県立大学 環境科学部 環境建築デザイン学科 教授)

リアルサイズでつくられた4作品はそれぞれの思考や方法論が異なりプレゼンされ、なかなか面白かった。「雪走る小さな太陽」は、移動式の太陽炉と異なる機能の組み合わせで構築されたソリの提案であり、ソリを引く姿は、ユーモアそしてアイロニーを感じるが、それらの機能間の関係性がまだデザインしきれていないと感じた。仮設礼拝所の「IORU」は,時代性を捉え、プログラムの設定は良かったが、行為と空間の関係性、またディテールの詰めに甘さが残った。最優秀賞の「FLUFFY SCAPE」は、テンセグリティによる膜構造の建築であり、作品の完成度は他のものに比べて高かった。周辺環境に応じて構造が動くのは面白い視点であるが、膜構造にしていることで内向的な空間となり、周辺との関係性が弱いと感じた。またテンセグリティが露出する内部空間もアクティビティを誘発するというよりは、むしろ限定するものとして映った。優秀賞の「TOKYO invisible」は、人工的な樹木によって、花粉から身を守るという現代の問題を解決しようとする意欲的な作品である。CFDによって分析した風の動きによって変化していく樹木装置の完成度は決して高いとはいえないが、このコンペの趣旨であるリアルサイズで思考し、自らの手で実験を繰り返し、恐らく失敗を繰り返してきたプロセスを伺い知れた。
新たな建築を発見するために、まだ見ぬ手法を手探りで根気よく模索していくプロセスが学生に限らず大切だと感じた。

関東審査委員 曽我部 昌史 (神奈川大学 工学部 建築学科 教授)

本コンペでは、回を重ねるごとに提案の多様さを増してきたが、最終回となった今回、特に幅の広い提案が集まった。同じ指標で評価をすること自体が簡単ではない。それぞれの提案は、方針の絞り込みの段階で迷うのか、飛び抜けた強度をもったものは無かった。最終回としては少々残念である。2次審査では全部で8作品が入選したが、大阪での最終審査にて原寸化されることとなった2作品は、いずれも屋外でのすごし方に関連したものである。8作品はどれも最終的な詰めの甘さでは大差が無かったが、提案の舞台を屋外にしたことで通常相手にすることの少ない課題に向き合うこととなり、結果として何かしらの新しさに接近できたということだろうか。

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